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★ 《ペール・ギュント》のあらすじ

これはペール・ギュントという、あるノルウェー人の物語です。

ペールは20歳。母親のオーゼと一緒に暮らしています。ペールの家、ギュント家はおじいさんの代まで羽振りが良く大富豪でした。しかし飲んだくれの父親に財産をすっかり食いつぶされ、今では窓にはボロキレ、塀や垣根は壊れ、荒れ放題の貧乏暮らし。
おまけに息子のペールは、王様になる、皇帝になると大きな事ばかり言うほら吹きで、仕事もせず喧嘩ばかり。今日もオーゼのお小言が聞こえます。いつもの様にオーゼのお説教が響き渡る中、ペールはヘッグスタのイングリッドという娘の結婚式がとりおこなわれる事を知り、呼ばれてもいないのに出かけていきます。村中の人がペールを見ても「あいつ何しに来た?」と怪訝な目を向けるだけ。喧嘩っ早いペールに女の子は恐がり、踊ってもくれません。
結婚式には、一人の美しく、清楚で、手には讃美歌を持った可憐な少女、ソルヴェイグも来ていました。ペールはたちまちソルヴェイグの汚れのない清らかさに惹かれ恋をします。その時ペールは花婿から花嫁のイングリッドがこの結婚を嫌がって、蔵に閉じ篭ってしまったと告げられます。何とかしてくれよ、と花婿に泣き付かれたペールはイングリッドを蔵から出すと約束しますが、人々が気づいた時には、何と!ペールが花嫁イングリッドをかかえ、険しい崖を登っていくではありませんか!!
「花嫁奪略だ!」「ペールを殺せ!」村中は大騒ぎになってしまいます。

一夜明け、すっかりイングリッドに飽きたペールはイングリを捨てて、行こうとします。イングリッドは元々ペールに気があり、何としてもペールを自分の元に引きとめようとします。しかし、ペールの頭からは穢れなき少女ソールヴェイの姿が離れません。イングリッドは絶望的に嘆きますが、ペールはイングリッドを捨て去ります。
村中が、村一番の富豪の娘を略奪したペールを探しています。山々からは「ペールを殺せ」という声が聞こえ、ペールはそのまま山の奥深くに逃げ込む羽目になってしまいました。

逃げ惑う中、ペールは一人の緑色の服を着た少女に出会います。彼女はドブレの国の王女、魔王の国の娘だと名乗ります。ペールは彼女に結婚を申し込み、ドブレ王国を我が物にしようとたくらみます。そして魔王に会うため、魔の国・ドブレ王国に行く事になったのでした。

魔王の宮殿では、この知らせを受けた魔王の手下のトロル達が手ぐすねひいて、苛々しながら待ち構えていました。トロル達は皆気味の悪い風貌で、あるものは頭が2つ、あるものは3つ、尻尾がはえているものや不恰好なものと様々でした。ペールの指を噛み切り、骨はスープに、体を串刺しにしよう、といきり立つトロル達の不気味な興奮の中、ペール達が到着します。

結婚の条件として、この国を我が物にしたい、とペールは魔王に告げました。魔王は条件を呑む代わり、こちらも条件を出す。一つは魔の国の飲み物を飲む事、一つは尻尾をつける事、と言い、ペールは牝牛の小便を飲み、尻尾を付けました。魔王の娘達の踊りの饗宴が始まる中、もう一つの条件として魔王が告げたのは、何と目玉をひっかき、傷をつけるというものでした。さすがのペールもこれには驚き、魔王の国から逃げ出そうとしますが、興奮したトロル達に追い詰められます。あと一歩で殺される!という所で教会の鐘が鳴り、トロルの国もろとも消え失せ、ペールは一命を取り留めたのでした。

未だ追われる身のペールは山の中に雨風をしのぐ家を作ります。するとある日その汚い山小屋にソルヴェイグが現れたのです。彼女は家も家族も捨て、愛するペールの元に来たのでした。ペールは喜びでいっぱいになり、穢れなきソールヴェイを王女の様に大切に、小屋に招き入れます。
しかしそこに、魔王の娘が赤ん坊と一緒に現れます。魔王の娘は、その子はペールの子、もしソルヴェイグと結婚するならトロルの魔法を使ってでも邪魔してやる!と脅します。ペールはソルヴェイグを守る為、そして穢れ無きソルヴェイグにふさわしい自分自身を見つける事が出来るまで、旅に出かけます。
ソルヴェイグには「取ってくるものがあるから、ここで待っていてくれ」と言い残して・・・。

ペールは母オーゼの家に向かいました。ずっと姿をくらましていたペールの無事を見て、母は安心しますが、彼女自身、臨終の時を迎えようとしていたのです。死を恐れる母に、ペールは最後の優しい空想話で、彼女を穏やかに神の元に導きます。ペールの腕の中でオーセは静かに眠る様に息を引き取ったのでした。

時は流れ中年になったペールはモロッコの西海岸にいました。彼は怪しげな商売で大金を儲け、今や立派な身なりをし、自分の船を持ち、全財産をその船に積んで地中海航海の真っ最中でした。船で航海を共にした4人の客人をもてなすペール。客人の紳士達はお世辞を言い、感心したそぶりを見せていました。しかしペールが席をはずした途端、ペールの全財産を持って逃げてしまうのです。
無一文になったペールは砂漠をさまよいます。
ある時、ほら穴の前で盗賊が今日の収穫を広げていました。そこに、何も知らず近づいたペールの足音に驚き、彼らはとっさに盗んだ荷物をほら穴に押し込み、逃げていきます。ペールはそこで宝石や武器、豪華な衣装を見付け、運が向いてきたとばかりその盗品を丸ごと頂き、今度は予言者になりすまします。

ベドウィン族の酋長の所で、大予言者としてもてなされるペール。その祝いの席では少女達が歌い、踊っています。踊り子の中には酋長の娘アニトラがいました。彼女はひときわ美しく、ペールは魅了されます。アニトラは悩ましく踊り、足を見せペールを誘惑するのです。すっかり彼女の魅力に夢中になったペールは、アニトラにせがまれるまま、宝石や貴金属を次々彼女に渡します。ついにアニトラはペールの財産が積まれた馬ごと盗む事に成功し、又もやペールは一文無しになるのです。
ペールはその後エジプトにも行き、メムノン像やスフィンクスも訪れます。スフィンクスで出会った男に連れられ、彼はカイロの精神病院で皇帝として迎え入れられたりもします。

こうして各国を廻り奔放に旅を続けたペールも、すっかり白髪交じりの老人になりました。今や金を掘り当て、充分な財産を得たペールは、故郷ノルウェーに帰るべく船に乗っていました。しかし、天候がだんだん荒れ始め、ペールの乗った船は激しい嵐に掴まり、沈んでしまいます。どうにかボートに掴まったペール。一緒にしがみついてきたコックを蹴落とし、自分だけ故郷に辿り着いたのでした。

故郷で、ペールは皮肉交じりに自分の人生を振り返りながら、行く当てもなく森を彷徨う内、見覚えある山小屋を発見します。小屋からは何と!!ソールヴェイがペールを待ち続け歌う声が聞こえるではありませんか!ペールはたちまち自分の人生を後悔し、そこから逃げ出します。

ペールの前に、死神の使者であるボタン職人と名乗る男がペールの前に現れます。
ペールの人生は出来損ないで、天国にも地獄にも行けない為、柄杓に入れて溶かしてくる様に言い遣ってきたと言います。
自分の人生とは?一体何だったのか?答えを見つけるまで待ってくれ、とペールは嘆願し、すがる様に、道行く人に問いますが、誰もが、ペールの人生の無意味を気付かせただけでした。
疲れ果てたペールが辿り着いた所は、あの山小屋でした。ソルヴェイグは、ずっと待っていてくれたのです。彼女はペールがいつも自分の信仰の中、希望の中、愛の中に存在していた、と言い、ペールを優しく包みます。助けを求め、彼女の膝に顔を隠したペールは、ソルヴェイグのその言葉に救われたのです。

ソルヴェイグは静かに子守唄を歌い始め、ペールは彼女の膝の中で静かに息をひきとったのでした。

(あらすじ部分は、成城大学教授:毛利三彌先生訳による「ペール・ギュント」(論創社)を大いに活用させて頂いております)

 
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